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Barbara 1. 身体の空洞が語るもの

ある程度の情報はすでに入っていたが、あえてこの点に触れずにいた。下手に書くとアーティストを単にエクセントリックな普通の不幸な女にしてしまいかねないからだ。N氏には三年たったら書くと言っていたが、もうすでにあれから三年以上経過してしまった。
この点とは、Barbaraに子供がいたかどうかと言う点だ。
Valerie Lerouxの「Barbara」からの抜粋を訳出しようと思ったけれど、彼女の書き方に不満を感じるので、彼女の資料を使いながら、自分なりに書くことにする。

Barbaraが結局子供を持たなかったこと、その理由は不確かだが、子供がいないと言うこと、産まなかったと言うことは、Barbaraにおいては大きな影を落としたことだけは、誰もがよく知っている。
Barbaraはインタビューの中で数回発言している。
1964年「Bruxelles時代もしお金があったら、私の子供は・・・」「もう次に子供を産むことは決してできない。・・・女性にとって、ここが空っぽなのは、・・・」(Elle、19/11/1964)
1990年「女性としての人生の成功は、私にとっては多分子供を持つことだったと思う。ああ、でもね、そうはできなかった」(Paroles et Musique fevrier 1990)
1992年「私が別の人生を選んでいたとしたら、その可能性は唯一もし子供がいたら・・・という場合でしょう」(Elle, 27/4/1992)
例の自伝の中では、さらに踏み込んで自らこう言っている。
「もう長い間、私の腹部に氷のように冷えた空洞を感じています。妊婦に嫉妬を感じていましたし、新生児は嫌いでした。私は歩く時も、時々腹部に手を乗せて歩きます」
ここまでくると単なる後悔ではなく、大きな苦痛だ。彼女の過去に何があったのだろうか。(とValerie Lerouxは書いているが、私に言わせれば、苦悩を飛び越えた錯乱か病気だ)

1969年2月11日の「Ici Paris」はもっとはっきり書いている。
「子供という言葉を聴くと、彼女は身震いする。開いた傷口に手を乗せて、それを引っ掻くようなものだ。1950年、Bruxellesにいた時、妊娠中に子供を亡くしている。そしてその時同時に子供を産む可能性も失ってしまった」
何しろ「Ici Paris」の記事だから、正しいのか、いい加減なのか、誰にもわからない。公にBarbaraはそういう話はしていない。
その代わりBarbaraはSophie Makhnoに子宮外妊娠をしたこと、そしてそのために外科手術をして酷いことになったこと、それはBruxellesでのことで、1950~1954年あたりのことだったと、話している。その時代の証言者は誰もいない。夫だったClaude Sluysはもうこの世にいない。ピアニストのEtheryは、憶えていないと言う。もう一人の友、音楽収集家だったJacques Vynckier氏は、失敗した手術のことを確かに憶えていたが、それが何の手術であったかは、思い出せない。(この時代身近にいた二人が思い出せないと言っている。私がEtheryでも、Jacquesでも、当然同じようにそう言っただろう)
私BruxellesもBarbara研究家のFrancois Faurant氏にこの点を二度も確かめたが、彼の資料にはBarbaraの子供に関する記録はないということだった。(30-40年前からの日本のBarbaraファンは日本語の資料にあった「バルバラは子供を産んで」「バルバラは子供をBruxellesの火事で失っている」などの記事を鵜呑みにしてきたが、少なくとも子供を産んだことはこれで完全に否定された。誤報だったわけだ)

この後Valerieの筆は、子供に対するBarbaraの異常反応、異常行動に及ぶのだが、それを読んでいると、あの声の出なかったコンサートでBarbaraが私の手をとり、それをゆっくりと愛撫し、口づけをしたのは、ひょっとしたら私をちっちゃな「子供」と思ったのではないかと、ふと思えてきた。

Barbara1112

Sophie Makhnoの発言は続く。
「私の娘が未熟児で生まれて、6週間保育器に入っていました。で、同じ時期にSerge ReggianiがBarbaraに一匹の子犬をプレゼントしました。娘が保育器から出た日Barbaraは籠にその子犬を入れてタクシーに乗って私たちの共通の友人たち全部にその子犬を見せに回ったのです。ちょっと変でしょう?」
「数日してBarbaraはお母さんと二人で私の家に来ました。とっても親切で、大きな大きな熊のぬいぐるみをくれました。楽しく過ごしました。でも後で知ったのですが、Barbaraはすごく気分が悪くなってまっすぐRemusatの家に戻れなかったんです。彼女は息が苦しくなって、Cafeに入って一休み、それからタクシーを捕まえようとしたのですが見つからず、ついに歩いてよれよれになって、とても遅くに家に帰ったそうです」
「あんなにも子供が好きなあの人が、新生児を見て完全に動揺してしまったんです」
「Andre GaillardがBarbaraに子供が生まれてお父さんになったと告げた時はBarbaraはギャラを全部彼にお祝いとして与えただけでなく、赤ん坊はどこにいるのかと繰り返し「14区のGiordano-Bruno産院」だと聞くと、早速翌朝、バラの花を手に赤ん坊を見に行ったそうよ」
Sophie Makhnoの話はさらに続く。
「彼女は養子をもらいたいと話していたこともある。それはしなかったけど、その代わり不幸な子供たちのために、大変頑張ったわ。最後の20年間は自分の友達の子供たちと、親密な関係をつくろうとした。連絡しあっていたわ。手紙やファックスや電話で。まだ7歳や8歳の子供に優しい言葉を大きな字で(これは近視のため)彼女が書くのを見るのは、おかしかったわ」
「ステイジにきた子供を見つけた時は、ほろりとなって必ず抱きしめていた」(75年のコンサートのとき花束を持ってステイジにあがった子供を、そういえば抱きしめてキスしていた。それは、子供を持てない苦悩からではなく、単なる子供好きだと思うのだけれどね)
「そしてついに永遠の慰めとして彼女は曲を書いたわ」

Cet enfant-la
Lui ressemble
Il a d'elle
Je ne sais quoi
・・・・・
Cet enfant-la
N'a rien de moi
Mais vous ressemble...

あそこにいる子
彼に似ている
彼女との子
私には無関係
・・・・・
あそこにいる子
私とは無関係
ただあなたに似た子

(「Cet enfant-la」par Barbara)
(「Cet enfant-la」par Marie d'Epizon )

(歌詞を全部読めば、確かに自分のではない彼の子供を通して自分の子供への切ない想いがあふれた母性の歌だと言うことがわかる。Barbaraが強い母性の人だったのだと言うことは、確かに言える)

Valerieの筆は、母性をあきらめ、最後に歌手、それが夢だった歌手の道を邁進すると続く。そしてその歌手が「声を失った」と次のテーマに入る。
この部分の小見出しは「Pas le choix?」(選択したのではなく、選択せざるを得なかったと言いたいのだろうか?)
これを書く3日前にValerieの出演したTV番組を見て、Valerieの顔や声を知った。彼女の文章に結構クレイムを入れたが、Journalisteとして無視できないテーマだったことはよくわかるし、放送最後の彼女の言葉を聴いて、信頼できるjournalisteだと言うことも再確認できた。
彼女は「Le hall de la chanson」という本当にすばらしいサイトを立ち上げている。そしてもう何年も前に、Barbaraの「身体の空洞」の発言事実をそこで指摘していた。
このテーマを今回初めて取り上げたのは、この文章に書き込んだような、不満や抵抗が私自身にファンとしてあったからだ。私がValerieだったら、Valerieのような光の当て方をしたかもしれない。もし私自身がjournalisteだったら
参照: 「Barbara Portrait en clair-obscur」P.176-P.179

Barbara 1959 「Les boutons dores」

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