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ナント成立過程(最終回)

情報・読み物 ナント成立過程(最終回) 2004/10/07
「ナント」の誕生...

家に入る。母は肘掛け椅子に横たわっていた。疲れ果て,不安げに。
「埋葬に行ってきました。土の中に...」
私はその場に力なく崩れ落ちた。母の無関心な表情の下に、耐え難い苦しみが隠れているのを思って、内容を選択しながら話した。でも時々、誰かに向かってわっと叫びたい気持ちを抑えることが出来なかった。助けてくれる人も、理解してくれる人もいない、この状況に悲しみが溢れそうになった。突然気がつくと私は母にヴヴワイエ(他人行儀な話し方)で話していた。まるで見知らぬ人に話すように。多分母と距離を取ろうと、心理的距離を置いて話そうとしたのだと思う。母は状況が把握できないでいた。私も母もこの時が転換期だったと後に話題にすることはないだろう、が二人の関係はこの時から変わるのだ。お互いの立場の変化がどうのこうのと明快に正確に分析する能力は私にはないとしても。母を愛するには辛い思い出が多すぎたとは言え、私は母をいつも熱愛していた。私はその母に対してお互いの甘えを絶とうとした。一方母は「手に負えない娘」と呼んでいた私に対して、理解できなかった子供の隠れた性格を理解できた直後の母親らしい感情の高まりを、初めておずおずと表現した。母自身が、娘の私が存在を引き受けなければならない、私の愛しい子供になった。私は出来うる限りの力で、この母をずっと守っていくだろう。

埋葬の翌日から、すぐにL'Ecluseに戻って歌った。何日かの間、私はまるで夢遊病者のままだったけれど。

1959年12月28日。その時は最初の4フレイズしか出来ていなかった。それから何年もの日々が流れ、ようやく1963年になって初めて、この作品に最終的に取り組んだ。しかもそれはCapucines劇場の「Mardis de la Chanson」出演の前日のことだった。
Gilbert Sommierが「Mardis de la Chanson」を企画立案したばかりだった。11月の全火曜日が私の出番だ。その第一火曜日に家族全員が初めて揃って来てくれた。嬉しかったし、印象的な日にもなった。
前日、練習のとき、私のノートは文字で一杯になり,書いては消し,書いては丸め、書いてはちぎり、さんざんだった。でも今日書かねば、と思っていた。「ナント」は次第に形を帯びつつあった。

その翌日、天才的ベイス奏者のFrancois Rabbathが伴奏してくれ、私はピアノを弾いて「ナント」を歌った。家族全員が会場にいることで、胸が一杯になった。すぐには声が出なかった。イントロを何度か繰り返した後で、何とか歌い始めることが出来た。私は歌い、母は素晴らしいと言ってくれた。
その夜Capucines劇場には業界人がたくさん来ていた。Louis Hazan,Denise Glaser,Michel Arnaud。
こっそり録音されたバージョンが秘密裏に売られた。初めて歌った「ナント」,それの入ったレコード、私も手に入れたことはない。

「ナント」は翌日、すぐに人の語るところとなった。ひとつの誤解の起源にもなる。人は私がナント出身だと思い込んだ。NON。「ナント」は父のことがなければ、完全に知らない街だ。父が何故死の場所にそこを選んだのか、知る由もない。何故「ナント」なのか。

ツアーをするようになって、ロワール川の河口、100kmの街に来ると,いつも息苦しくなった。心の苦痛無く、平静を保って「ナント」に来れるまで,長い長い歳月が必要だった。
毎回こっそり墓参りをしては、花を手向けている。
「ナント」が実は、実父の死の実体験から生まれた曲だと、私が音楽関係者に告白したのは、ずっと後のことだ。  (おわり)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「Il etait un piano noir...」(P.126~P.137 & P.157~P.158)
   Auteur : BARBARA (Traductrice : Bruxelles)

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