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Barbara et Bruxelles (2)

Barbara et Bruxelles (2) 2005/06/03
Le Cheval Blanc (白馬)

もう少し後でBrassensの初78回転を聞いたのも、やはりCのおかげだ。La porte Louiseのレコード店で聞いたのだがその時はEtheryも一緒だった。三人に共通する忘れられない思い出だ。CはよくマジックをするためにBoondaelにやって来た。彼の芸は大人気だった。三人でしばらく仮小屋でショーをして、順調だったけれど、私たちには興行のライセンスがなかった。地区の憲兵がやって来て興行の停止を命じた。 Etheryと私はまたしても仕事を失った。
Cは地元のことをよく知っていて三人で興行を続けられるように場所を探してみようと言った。
La Malibranの古い家からそう遠くはないIxellesでLe CHEVAL BLANCという名の、ごく普通のポテトの揚げ物屋があった。油くさく薄暗いこの揚げ物屋の奥に、楽屋はないけれど、小さなステイジの付いた、ホールがあった。とてもデラックス、何しろ幕まで付いていたのだから。ホールの壁はJacques Nathanという名の若いアーティストによって装飾が施されていた。ポテトフライや小エビの詰め物の悪臭のする中に、このようなシュールな装飾の場所があるとは、それ自体がシュールだった。
詩やシャンソンや演劇が熱狂的に好きだった、ショービジネスの先駆者が、私たちがここを見つける前にこのホールを使っていた。ここでBruxellesの左岸派演劇のはしりを催して成功を収めていた。彼はここをLa POUBELLE(ゴミ箱)と名づけ、Jacques Nathanに内装を依頼したのも彼、Jo Dekmineだった。Jo Dekmineには創造性、高い芸術性、そして多方面にむかう留まる所を知らぬ好奇心がある。私は彼こそベルギー最高の知的な若き劇場支配人だ、と思った。
彼はLa Poubelleを止めていた。もっと大きなちゃんとしたところで上演したくなったのだろう。Bruxellesのあちこちで次々と劇場を開いていき、ついにあの「Theatre 140」に取りかかろうとしていた。ここは、後に作詞作曲者、芸人、歌手など沢山の人たちを集める所となる。私自身この「Theatre 140」には、その後何度か出演した。

私たちのCHEVALBLANCに話を戻すと、Cは早速大家さんたちと協定を結んだ。大家さんたちは飲み物の利益を、私たち三人は入場料からの利益を、と言うことで話はまとまった。他のアーティストもあっという間に集まってきた。パントマイム、物まね、すばらしい声の少年歌手も来た。 Etheryはピアノの弾き語りでグルジアの歌を歌った。私はGill et Vilardの”L'Enseigne de la fille sans coeur",Paul de Kockの"Madame Arthur",Jean-Roger Caussimonの"Monsieur William"等を歌った。 Cは顔が広くて、CHEVAL BLANCはCのおかげで、ブルジュアの客、弁護士や、医者で賑わった。幸せな数ヶ月が過ぎた。その後曖昧だった金銭契約から口論が始まった。大家さんたちは、ショーが大当たりしているので、料金を上げようとした。私たちは入場料まで上げられるのは嫌だった。つまりは出演者たちと、劇場主達との間で金銭的に縺れてしまって、結局CHEVAL BLANCの時代は終わったのだった。

Barbara 「Il etait un piano noir...」 P.99~P.101

Barbaraにこの時代があったことを私はとても嬉しく思う。artistたちのcommuneで明日の見通しもない若い感性がぶつかり合った時代。本物の感性はこういう場でしか出会わない。社会の管理から吹き飛ばされ、目の前に何のレイルも見えない。不当なほど、社会や生活に追い詰められても、社会人や生活者の顰蹙を買っても、完全に別次元の価値体系に生きてこそ、あるいは死んでこそ、若きartistの匂いが発酵するものだ。この時のBruxelles、そしてその前のBruxellesでBarbaraはさんざんな体験をする。悲惨を悲惨と感じない若さだけで真っ暗な夜道を手探りで歩いた不安と孤独の体験があってこそ、その体験が将来(勿論社会的にでも世俗的にでもなくその人の心の中でのみとは言え)燦然と光を放つのだ、と私は思う。そしてそれは直感と本能に基づくartist特有の出会いに繋がってゆく。

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