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ナント成立過程(3)

情報・読み物 情報・読み物 ナント成立過程(3) 2004/10/05
「さよなら」さへ言わないで...

シスターJeanneにもらった紙切れを持ってタクシーでその人を訪ねた。街角のコーヒー店。
入っていく。4人の男がカードゲイムをしている。1人が立ち上がり、近づき、やさしく私の手を取る。「あなたが娘さんですか?」「.......」
「ここにいる皆はお父さんの友達です」
メガネをかけた人(この人がPaulさんだった)が一言いいたげに私に近づく。
4人ともいろいろ話してくれた。一人の風変わりな男の話を。何にも聞いてないさ。ただ家族に見捨てられたって言ってたよ。可愛い子供が4人いたって。特にその中の娘は、歌手になったって。
「何で暮らしを立てていたの?どこに住んでいたのですか?」
野宿することもあったよ。でも朝になると、しゃきっとして俺たちのところにやって来た。皆で延々とカードゲイムをするのさ。楽しくて、気前よくて、大食いだったな。神様なんて信じていない。人生に期待なんて何もしてなかった」
「恨み言は一切言わなかったよ」Paul氏が私のために伝えてくれた。
ただ一度だけ、グデングデンに酔っ払って「もう先が見えてきた。俺も終わりだな」って俺に言ったよ。大丈夫かって肩担いでやろうとしたらね。Paul氏が続ける。私はすっかり動転しながらただ聞くのみ。想像だに及ばない一人の男の人生を。けれど、節々に父の性格が現れているようにも思える男の、最終章を。

死を看取れなかったことを後悔した。父のいやな思い出は忘れよう。後悔を伴った一番深い絶望、それは、大嫌いだった父に、最後に今溢れ出る言葉を、かけられなかったことだ。
「お父さん、許します。忘れます。どうぞ安らかにお眠りください。私は、もう苦しんではいません。お父さん、私、歌手になったの!歌ってるの!」
父は、どこに居ても、犯した罪の悔恨と思い出を引き摺りながら、長い間苦しんで生きてきたに違いない。
私はハッと気づいた。父だったのだ。何度か家にかかってきたミステリアスな電話。出る度に、何も言わないで切れた。電話の向こうに居たのは、父だったのだ。
あのメロディーが頭の中に再びやってきた。

Paul氏は私の前に、古い財布とレンズに傷の入ったメガネを差し出した。そして「もし知っていたら、あなたのお人柄を知っていたら、いずれにせよ、もっと早く連絡していましたよ」と言った。
「もし知っていたらって、...ひどい!」私は叫んだ。
「私たちではなく、父が、私たちを捨てたのです。母は苦しみをじっと耐えて生きてきました。私だって、父には...」
「わかります。お嬢さん。わかります」事情がわかる筈のないPaul氏が言う。気持ちが伝わり優しさがフッと流れた。
「ごめんなさい。父の気持ちを尊重して下さったこと、感謝してます。ご好意有難いです。で、どのような最期を迎えたのですか、父は」        (つづく)


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