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ナント成立過程 (1)

情報・読み物 ナント成立過程 (1) 2004/10/03
突然の電話...

1959年12月21日、月曜日だった。一人でアパルトマンにいた。静かに時が流れていた。私は優しい呼吸をしていた。電話が突然ブルブル震えて、静寂を破った。聞き覚えのない声、少し聞き取りにくい。
「お父さんが、...倒れられました。...ナントのサンジャック病院にいらっしゃいます。お越しください」
言葉が出なかった。声が動かない。電話機を手に、ただ茫然と。・・
父が連絡して来た?10年、10年間も一度も姿をみせない、居場所も教えてくれない父が・・私を呼んでいる?夢遊病者のようなままで、病院名を聞いた。外科?事故?
「何ですって、誰が?名前は、いつ?」
...頭が混乱する。電話が切れた。のみこめない。もう一度ダイヤルしてみる。同じ人が出た。「霊安室につなぎます」なかなかでない。焼けるような痛みが下半身に走る。
「変わりました。娘さんですか?ご家族を探したのですが、わかりませんでした。2日まえに亡くなられました。受付につなぎます」
解剖しないようにお願いしたのだけれど、よく覚えていない。はっとわれに返って、じっと電話機を見る。静まりかえった物体だ。のろのろと、しかし正確に、無意識に動く。コートを引っ掛けバッグを手に取り、母への伝言を走り書きする。
「お父さんがナントで死にました。そこへ行きます」
駅までタクシーを飛ばす。ナント行きの列車に乗るために重い身体を引き上げる。

ナントは雨。雨の中をタクシーで病院に向かう。入り口で先ほどの痛みが走り立ち止まる。ドアに寄りかかり、長い間身体を支えていた。人が「どうかしたのですか?」と声をかけてきた。受付で私は自分の出した声に少し驚いた。針金のように尖った声。
「C室へご案内します」返事の声はむしろ何倍も優しい。メロディーが、それはずっと後にしか思い出せなかったのだが、頭の中で鳴ったような気がした。C室のドアの前まで、耳に悲しげなメロディーがまとわりついた。C室のドアが巨大化して歪む。Cという文字が揺れて見える。ノックした。ドアを開けてくれたのはシスター(修道女)だった。
「遅かったですね」「知りませんでしたから」
「最後の最後まで、意識がありました。誰にも連絡するなとおっしゃいました。口を堅く閉ざしたまま質問にも答えてくださいませんでした。シスターJeanneに会って下さい。最後を看取った方です。...こちらです」
ドアの向こうに小さな部屋があった。その人はベッドに横たわっていた。顔に布は無く、眠っているように見えた。10年も会っていなかった父をじっと見つめた。頬がこけ、老いて、顔は蝋人形のように死んでいた。シスターに目をやる。シスターが頷く。近寄って父にそっと触れてみた。私は2,3語途切れ途切れに小さく叫んだ。誰かが私に話しかけ、私を捕らえ、引き離す。そしてイスに座らせたようだ。気がつくと、私は暖かい飲み物を手にしていた。それを飲んだ。  (つづく)


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