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Anne Sylvestre & Marie Chaix (5)
参照:Anne Sylvestre : Ecrire pour ne pas mourir:
「死なないために書く」 の歌詞 & その歌 をきく。
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Anneは20歳頃から自作を書き始めた。そしてNicole Louvierを聞いて自分もそんな風になりたいと思った。しかし風呂場で歌って家族に聞かせる程度だった。1955年政治犯の全面的大赦があって父がFresnesから出てきた。父はAnneの最初のファンになり、彼女のデビューに力を尽くした。Anne22歳Marie14歳。その父も1963年に死亡。
仕事を探す羽目になったMarieは最初出版社?で、そして1966年から(1964年という資料もある)Barbaraの元で働き始めた。Marie24歳。
ある日BarbaraはMarieに家族のことを聞いてきた。ユダヤ人で占領下のフランスを逃げ回ったBarbaraを前に、加害者側の家族のことを語ることは言いようの無い苦痛だった。それでも話した。
「Echangeons nos morts,
ils sont tous pareils」
とBarbaraは言い、Marieにそれをいつか書き尽くすようにと言った。この場合ilsとは各々の父親である。Barbaraは父親がしでかした事ゆえ、苦しみ続けなければならない娘、Marieに自分を見たのだろう。「私の父も、似たようなものよ。死ぬ前も死んでからも、さんざん苦しめられてるわ」
そう言いたかったのだろう。そして言葉には出来ない、父親への深い愛情も、同時に見抜いていたに違いない。
よくぞ聞いたものだ。
よくぞ答えたものだ。
よくぞ許したものだ。
それは、父親の過ちから逃れられずに苦しみ続ける娘をBarbara自身が生きてきたからだろう。
mp3で置かれた3人の長い長いインタビューをお聞きになった方の耳にはJulietteという言葉が聞き取れただろう。二人が共に語るJulietteは、勿論歌手のJulietteではなく、1937年、Marieの生まれる前から、戦前から家に住み込んでいた女中のことである。父がいなくなってからも、母と二人で家族を守ってくれたJuliette。戦後名誉も収入も途絶えて、給料も支払えなくなったと告げた時もJulietteはこう言った。
「奥様、もし私が今出ていったら、誰がお子様達をお守りするんですか」
そう言って不幸を共にすることを表明してくれた。
AnneもMarieも愛の壁に守られて幼い日々を過ごしたと語っている。1937年からいたとすれば、AnneにとってはこのJulietteの存在は非常に大きかっただろうと思われる。AnneはJulietteが彼女を抱いて歌を歌って、暗く落ち込んだ家族を励ましてくれたのを忘れない。(母は病から半身不随になっていたのだった。また天使のようにハンサムだった2番目の兄Paulも後に1962年に病死した。)「Tout va bien Madame la Marquise」等を歌ってくれたと言っている。(この歌は現代でもフランス人なら誰でも歌える、昔からの歌で最近もある政治の場面で政治家達によって合唱された。)Anneが子供の歌を歌う原点は、このあたりにあるのかもしれない。人生を乗り越え、歌手になり、作家になった姉妹にとって、Julietteの果たした役割は大きい。
最後にMarieはAnneに今度はAnneが父のこと、家族のことをAnneの視点で書くように勧めている。Anneの視点でしか書けない8年間が存在する。MarieにはAnneの苦しみの大きさが、いまこそより深くわかるのだろう。
Marie Chaixの著作を読まずして彼女達の父親、Albert Beugras氏について言及することは、避けたいと考えている。
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参照1:Marie Chaix :
(この資料にNadine Laïkが登場する。Marie Chaixの幼友達として子供の頃のMarie Chaixを細身の美人で、クラスメイトに一目置かれる存在だったと証言している。Nadine Laïkは2年先にBarbaraの秘書になっている人物だ。この人やAnneを通してMarie Chaixの存在をBarbaraはかなり身近に知っていたのだろう。ところでこのNadine Laïkも有能なマネージャーであり、作家であり作詞家でもあったようだ。Marie Chaixをスカウトしたのは、Nadine Laïkの推薦でもあったのだろうか。Nadine Laïk、今後調査の必要ありだ)
参照2:Radio Canada Anne Interview 5本 :
参照3:Valerie & Marie parlent de Barbara 過去記事より一部再録